Ki-67はもともと白血病患者の血液中の自己抗体として発見された抗体の名称である1).
この抗原が認識するいわゆるKi-67抗原(gene : 10q26.2 ; MKI 67(mki67))は,
細胞増殖周期のG1期からS期,M期までの細胞の核内に発現していることから,
細胞増殖関連抗原として知られるようになった(G1期の一部には発現していないとされる).
現在よく知られているMIB-1はKi-67抗体のクローン名の1つで,
熱処理を加えることによってホルマリン固定標本でも反応する抗体のことを指す.
Ki-67イコールMIB-1ではないことに注意が必要である.
現在,病理領域では,Ki-67は細胞増殖と細胞周期の代表的マーカーとして用いられている2).
一般にKi-67の発現の評価は,1,000個の細胞をカウントし,
その中の陽性細胞を除することによって算出する(ki-67index,Ki-67陽性細胞率)が,
この値は実際にはgrowth fractionに相当することになる.
厳密な意味での増殖能の判定には,S-phase fractionを算出することが必要であるが,
その算出にはflow cytometryによるのが最も正確である.
組織標本上でS-phase fractionを調べるためには,
免疫染色でpRbとcyclin Aの陽性細胞率を算出するのが合理的である.
特に前者は,細胞がS期を通過するためのキー蛋白であり,理論上も優れている3).
簡便性と再現性の点では,Ki-67にやや劣ることが欠点であるが,Ki-67の発現は,
S期の細胞を同定していることにはならないことに注意が必要である.
しかし,Ki-67陽性細胞率はS-phase fractionに相関することが知られており3),
現在ではKi-67陽性細胞率はその組織の増殖能の指標として使用されている.
Ki-67陽性細胞率と腫瘍の悪性度には正の相関がみられることがあるため,
腫瘍組織の悪性度の指標としても有用であることが知られている.
特に乳癌やGIST(gastrointestinal stromal tumor),種々の間葉系腫瘍では,
Ki-67陽性細胞率の評価が,その腫瘍の悪性度や化学療法の効果判定の指標として用いられている4)5).
消化管では,Ki-67陽性細胞率と癌の悪性度や予後との関連性は明らかではないが.管